Vol.29_組織の新陳代謝を考えてみよう
新しい年に、組織は「何を更新」すべきか
2026年になって早くも1ヶ月が過ぎました。
節目を迎えると、多くの組織が「今年の目標」や「新たな方針」を掲げます。
数値目標を更新し、計画を引き直し、スローガンを新しくする。
これは毎年繰り返される、いわば“年始の儀式”です。(正確には“年度初め”の儀式)
それ自体を否定するものではありません。
一方で更新すべきものがあります。
それは数字や計画だけでなく「組織の在り方」。
ここにも目を向けるべきではないか、というのが今回のテーマです。
今、多くの組織が直面している課題――
疲弊、硬直、属人化、過剰適応、変化への鈍さ――
これらの根底には、「組織が重くなりすぎている」という共通点があるように感じます。
新年の節目は、組織の“重さ”を見直す絶好のタイミングといえるでしょう。
分かりやすくいえば、この“重くなりすぎた組織”をどう見直すか。
「頑張り続ける組織」は、なぜ限界を迎えるのか
これまでの日本企業は、「頑張ること」を前提に成長してきました。
長時間労働、献身、責任感、空気を読む力。
それらは確かに、組織を支えてきた力です。
しかし同時に、次のような状態も生み出してきました。
- 頑張れる人だけが評価される
- 無理をやめる選択肢が消える
- 調整役やベテランに負荷が集中する
- 新しい挑戦が“余計な仕事”になる
- 組織全体が常に余裕不足の状態になる
この状態が続くと、組織は「強そうに見えて、実は脆い」構造になります。
表向きは回っているが、内側では疲弊が蓄積し、誰かに大きな負荷がのしかかる
そして重たい組織は、変化に弱い。
これは心理学的にも、組織論的にも、ほぼ共通した結論です。
だからこそ、2026年に向けた問いは「どうしたらもっと頑張れるか」ではなく、「どうしたらもっと軽くなるか」という問いとなるわけです。
軽やかさとは「サボること」ではない
ここで誤解してはいけないのは、軽やかさは「緩さ」や「甘さ」とは違う、という点です。
軽やかさとは、
- 必要以上に抱え込まない
- 役割と期待が整理されている
- やめる判断ができる
- 状況に応じて動き方を変えられる
こうした “可動域の広さ” を持った状態、“可動域そのものを広げる動き”を指します。
軽やかな組織ほど、判断は早く、責任の所在は明確で、行動は一貫しています。
重たい組織が「全部を背負おうとする」のに対し、軽やかな組織は「背負うものを選ぶ」。
軽やかな組織とは、組織が成熟していることの外側に現れるサインです。
成熟した組織は、すべてを管理しなくても回ります。信頼と判断の分散が進み、結果として“軽さ”が生まれます。
軽やかさは「設計」で作ることができる
軽やかさは、個人の性格や意識改革、すなわち個人任せでは生まれません。
組織の構造と人事の設計が大きく影響してきます。
ポイントとなるのは、下記①~③のような”余裕や予約のある組織になっているか否か”でしょう。
① 仕事を足す前に、引く仕組みがあるか
新しい施策、制度、プロジェクトは増える一方です。一方で、「やめた仕事」はどれだけあるでしょうか。やめる判断を個人任せにすると、真面目な人ほど抱え込み、組織は重くなります。やめることができる仕組みを持つこと。これが軽やかさの第一歩です。
② 役割が“太り続けていないか”
仕事ができる人ほど、役割が増えます。
しかし役割の追加は、必ずしも価値の最大化につながりません。
人事の役割は、「役割を増やすこと」ではなく、「役割の密度を最適化すること」 です。
③ 可動域を持たないミドルを量産していないか
責任は重いが、裁量は小さい。情報は遅く、判断は求められる。
この状態では、ミドルマネジメントは組織の“重石”になってしまいます。
可動域を持たせる設計があってこそ、ミドルが調律役として機能していくものです。
2026年、ミドルに期待される価値とは何か
ここ最近、ミドル層には下記のようなことが求められてきたはずです。
- 状況を読み取り、力の入れどころを調整する
- 若手の挑戦を邪魔せず、守る
- 経営の意図を現場の言葉に翻訳する
- 「やらない判断」を引き受ける
ところが実態はどうか。
- 自分ひとりで多くを背負わざるをえない
- 正解を示し続けなければならないというプレッシャー
- 上下の板挟みに耐えることが当たり前
ミドル層に求めるもの、端的にいえば“しなやかさ”でしょう。
しなやかさとは、変化に柔軟に対応しながら強さや安定感を持続している状態です。
これを大きな強みとして持続的に活かせる組織となるためには、下記の条件・要因を満たす環境整備や制度設計が必要です。
- 感情と理屈を分けて扱える
- 過度な期待で人を縛らない
- 信頼を前提に対話する
- 個を消耗品として扱わない
2026年に改めて問い直したい、3つの問い
2026年のスタートにあたり、次の問いを立ててみてはどうでしょうか。
- 私たちの組織は、どこで「重く=動きが鈍く」なっているのか
- 本当はやめてもいいと思っているが、やめられない仕事は何か
- 人が軽やかに動ける余白は、意図的に設計されているか
これらは、人事制度や評価制度、組織構造を見直す際の重要な起点になります。
軽やかな組織を目指すことは、未来に向けて、変化を恐れず、進み続けるために必要です。
新しい年に、目標や計画だけでなく、“組織の重心”そのものを少しだけ軽くする。
それは、人と組織がこれからも前に進むために確実に必要なアップデートといえるのではないでしょうか。

