Topics | 2026年9月第4週の注目テーマ
① AIが答えを出すほど、人は考えなくなるのか
慶應義塾大学・安宅和人研究室と中学校・高校の探求学習をサポートするAIアプリを開発するマイパレが、中高生の探究学習でAIの「関わり方」を比べる実証実験を発表しました。
比べるのは、考える中身を深める支援、探究の進め方を助ける支援、標準的なAI。同じAIでも、人にどう関わるかを変えて検証します。結果はこれからです。 実証実験の発表
企業でのAI導入の視点で見ても、これは気になるテーマです。
若手社員が企画書をつくるとき、AIが完成度の高い案をすぐに出してくれる。提出は早くなり、企画書の見栄えもよくなるでしょう。
でも、その若手は、何を解くべき問題として選んだのでしょうか。AIの案のどこに賛成し、どこを退けたのでしょうか。
もちろん、毎回AIに問いを返されていては仕事が進みません。急ぐ仕事には、答えを出すAIが役立ちます。一方、考える力をつけてほしい仕事までAIが先回りしてしまうと、成果物の質は上がっても、本人が判断した経験は残らない。
AIの性能が上がるほど、「何を任せるか」は重要になります。同時に、AIを使った後、人間に何が残るのか、ここも見てしっかり押さえておきたいところです。
AIに社員の仕事をどう助けてほしいのでしょう。答えを出してほしいのか。問いを返してほしいのか。まさにAIリテラシーの領域です。
② 外国人材を採った。その職場は受け入れられるか
人手不足を受け、外国人材の採用を考える企業がさらに増えています。
外国人採用するためのルートを探し、人数を決め、日本語の支援を用意する。受入れの準備というと、こうしたことが思い浮かびます。
では、実際に働く現場の準備はどうでしょうか。
厚生労働省が9月15日に公表した監督指導結果では、技能実習生を使用する事業場で、機械などの安全基準、健康診断後の対応、割増賃金の支払いなどに関する違反が確認されています。特定技能外国人を使用する事業場でも、主な違反事項は同様でした。 厚生労働省・監督指導結果
この数字は違反の疑いがある事業場などへの監督結果です。外国人材を受け入れる職場全体に、同じ割合で違反があることを示すものではありません。
それでも、違反事項の中身は見逃せません。
機械を安全に使えるか。働いた分の割増賃金が支払われるか。健康診断の結果を受けて必要な対応がなされるか。
どれも「外国人材向けの特別な施策」ではなく、職場の基本です。外国人材を迎える場面で、その基本が改めて問われています。
人手不足を解消するために採用人数を増やしても、配属先が安全に働ける状態でなければ、人を受け入れる力が増えたとは言えません。
企業が採用したい人数と、安全・安全してきちんと働ける人数は同じなのか。
外国人材の採用計画を見るとき、配属先の設備、勤怠、賃金、健康管理が適切に確保できているか、そこも一緒に見る必要があります。
③ 「社員」の肩書があれば、社会保険に入れるのか
「勤務時間が短くても、正規の社員として雇用する」
柔軟な働き方として聞けば、自然な話です。しかし、9月14日に厚生労働省が短時間勤務に関するある通知を出しました。 厚生労働省・通知本文
この通知は、個人事業主などを極端に短い時間だけ「正規型の労働者」として雇い、社会保険の加入手続きをする一方、本人から受け取る報酬を上回るお金(勉強費、広告費、掲載料、参加料、コンサルタント料、協力金、委託費など)を「会費」などの名目で徴収しているケースを想定しており、そうした実態も踏まえて、社会保険の加入資格を判断するよう求めています。
給料を受け取るために雇われているはずなのに、本人が会社側へそれ以上の金額を支払っている。
そう聞くと、「正社員」という名称だけでは働き方を判断できないことが分かります。
厚生労働省は、保険の加入資格について、契約書の文言だけで決めず、労働日数や時間、仕事の内容、報酬などの実態から判断すると明確にしました。通知に示された条件の両方に該当する場合は、原則として被保険者資格を有さない扱いです。一方、条件の一方だけに該当する場合などは、実態に即した個別の判断になります。
ここで「短時間正社員は社会保険に入れない」と読んでしまうと、通知の趣旨を取り違えます。問われているのは、短く働くことではありません。実際に仕事をして賃金を受け取る雇用なのか、保険に加入するための形だけの雇用なのかです。
副業や個人事業と雇用を組み合わせる人は、今後も出てくるでしょう。
契約上の肩書と、日々の仕事やお金の流れが食い違っていないか、これからも留意が必要な点といえるでしょう。
④ 「家で過ごす」が最多なのに、なぜ行楽地は混むのか
シルバーウィークの過ごし方を尋ねた調査では、「自宅でゆっくり過ごす」が43.6%で最多でした。調査対象は全国の234人です。連休中の予算は、1万円以下という回答が半数を超えました。 SES Plus・調査結果
一方、連休初日には交通機関や行楽地の混雑が報じられています。また、東京湾アクアラインでは、連休中のピーク時に通過まで最大約3時間かかるとの予測も出ています。予測を、実際に3時間かかったという意味で読むことはできません。 乗りものニュース・渋滞予測
家で過ごす人が一番多いのに、出先は混む。
一見、矛盾しているように見えます。しかし、調査の「最多」は「全員」でも「過半数」でもありません。よくよく見ると、調査で自宅を選んだ人が43.6%なら、それ以外を選んだ人は半数以上なのです。しかも、全国の人が出かける先は、全国に均等に散らばりません。
例えば100万人のうち、出かける人が少数だったとしても、その人たちが同じ日の午前中に、同じ道路や人気の場所へ向かえばどうなるでしょう。
道路の車線、列車の座席、駐車場、店の席は、連休だからといってすぐには増やせません。そこへ利用者が集中すると、出かける人が全体では少数でも、その場所では需要が供給できる量を超えます。
つまり、混雑を決めるのは「国民の何割が旅行するか」だけではありません。
何人が、いつ、どこに集まり、その場所が何人を受け入れられるかです。
これは観光地だけの話ではなく、特定の商品や時間帯に注文が集中する場合も同様です。
需要を平均だけで見ていないでしょうか。顧客が集中する場所と時間に、供給をバランスよく提供できているでしょうか。

