Vol.8_しなやかな自由

Vol.7『窮屈な自由』では、自由なようで選べない時代における「情と理の統合」について述べてきました。感情(Will)と理屈(Must/Can)をバラバラに扱うのではなく、両方をきちんと捉え直すことで、ようやく“前に進む選択”ができるようになる。そんな話でした。

でも、ここで終わりではありません。 むしろ——ここからが本番です。

統合できたのに、また迷う。その理由は?

「これしかない!ってあのとき思ったのに、なぜかまた迷っている……」と、自分のことながら驚くことがあります。

名刺のデザイン案の選択肢をようやく絞れたはずなのに、またふとデザイン会社のホームページで見た斬新なアイデアが気になったりします。「発注期限まで時間があるから、それまでどっちにするのか熟するまで放っておこう」と、最初の気持ちがぼやけてしまうこともあります笑

こういったこと、よくありませんか? 私たちは“整理できた”瞬間に安心してしまって、そのあとに必要な「腹をくくる」というプロセスを忘れてしまうことがあります。思いと道筋がつながっただけでは、まだ“火”がついていない。そこにもう一つ必要なのが、「決断し、やり抜く意思」。今回はこのテーマについて考えます。

南場智子さん(DeNA創業者)の言葉から考える

最近、ある記事でDeNA創業者・南場智子さんのコメントに出会いました。

選択肢に迷ったとき、重要なのは“どちらを選ぶか”ではなく、 “選んだ道をどれだけ本気でやり抜けるか”。

これは経営の話だけではありません。私たちの日常の選択、人生の岐路にも深く響く言葉だと思います。
そうなんですよね。重要なことは決めることよりも、実現すること。確かにそれが大事なのに、つい抜け落ちることがありませんか?

つまり、こういうことです。情と理を統合できたものが“正解”かどうかなんて、誰にもわかりません。でも、それを“正解にしていく”ことはできます。

ここでひとつ、疑問が出てきます。 「じゃあ“理”さえ整っていれば、情なんていらないのでは?」「自分の気持ち(Will)より、合理的なやり方で突き進めばいい、ってこと?」

話が元に戻ってきました。。。。とにかく“正しくする”ためなら、なんでもありでうまくいくのでしょうか。
一見すると大人の選択に見える「情を封印する」という姿勢は、実は“燃え尽き”や“無感動”を招く原因になることもあります。

実のところ、「正解にしていく力」を支えているのは、自分の中にある“やりたい”という火種(Will)だと思います。
情(Will)を置き去りにした「正解づくり」には、持続力がない。それが、途中で立ち止まってしまう理由でもあるのです。だからこそ大切なのが、「やり抜く意志」。正しさを“探す”段階から、選んだことに“正しさを実装していく”段階へと、自分を移行させる覚悟が求められるわけです。

バランスではなく、決断。そして柔軟さ。

こう話すと、「やっぱり最後は振り切ることが大事なんですね」と思う方もいるかもしれません。
でもここで言っている「移行」とは、そういう“突っ走ること”ではありません。

統合できた情と理に、火を灯し、自分の意志で方向を定めて進み出すこと。
それこそが、「やり抜く意志」の次に求められる一歩です。

そして、実際に進んでみて違和感があれば、そこで立ち止まって修正してもいい。舵を切ることもできる。重要なのは、どちらを選ぶかではなく、“進みながら整える”という発想です。

完璧な選択を探すのではなく、自分の選んだ道を、正解にしていく。

これが、南場さんの言葉の本質であり、”Unlock Your Potential”を実装するスイッチとも言えます。

「Unlock」は、動いてこそ開かれる

Unlock Your Potential──自分の可能性を解き放つ、という言葉は、どこか“静的”に聞こえるかもしれません。でも本当は、これは動的な言葉です。

選ぶ。決める。進む。そして変える。

可能性は“見えてくる”ものではなく、“動いた先で広がっていく”もの。止まっていたら見える景色は変わらないけれども、動けば視界は変わるし、風景は広がる。
情と理を整えた次にすべきこと。それは、前に進むことです。自分自身が選んだ道を、正解にしていきましょう。