Vol.18_“やさしい言葉”が、一番コワい?
会議室で、こんなやりとりがあったら…
「君には期待してるんだよ」
「いったい何があったんだ?君らしくもない」
「君だけではなく、みんな、がんばってるんだよ」
……言ったことがある、あるいは言われたことがある方も多いのではないでしょうか。
どれも直接的に否定しているわけではないのに、妙にひっかかる。
悪意はないはずなのに、心にズシンと残る。
言葉には、「思った以上に影響力」があります。
そして言葉を発した当人が、その影響の強さを自覚することは難しいものです。
言葉を発した瞬間、そこに“無自覚の力”が宿ります。
それが相手の感情や信頼を、知らないうちに揺らがせてしまうというわけです。
今回は、「もっと気を付けて声をかければよかった」という視点から、マネジメントや日常の人間関係に潜む“言葉の効きすぎ問題”を一緒にほどいていきます。
“じわっと刺さる”言葉たち
ちょっとした軽い励ましのつもりで使ったひと言、うまくオブラートに包んだつもりで放ったひと言、決して相手を直接否定する言葉ではないなにげない声かけのひと言、こちらが言いたいことをうまく察してほしいという思いで伝えたひと言、これらは相手を“いつの間にか刺してしまうナイフ”と化し、それが知らず知らずのうちに相手のメンタルにダメージを与えることがあります。
たとえば、こんな一言を発したら、受け手はどういう反応になるでしょうか。※赤字部分が本音



実際に言葉を発する側は、そこまで深く考えていないことが多いものです。
でも、受け取る側はこちらが思った以上にとても敏感です。
そして、それがひどい場合は、「自分のせいだ」「能力の限界かもしれない」「この会社にいる価値はない」と深く思い詰めてしまうことがあります。
こうした言葉は、発した当人に悪意がない分、余計に厄介なのです。 部下に説明の機会すら与えず、「評価されたような気分」だけが残る——そんな場面を、あなたもどこかで見たことがあるかもしれません。
言葉に潜む“裏メッセージ”
では、こうした言葉がなぜこんなにも刺さるのでしょうか。
それは、表面上の言葉とは別に、裏のメッセージが読み取れてしまうからです。

こうした「含み」のある言葉は、伝える側は軽いつもりでも、受け手にとっては“人格否定”のように響いてしまうことがあります。
“何を届けるか”が、信頼関係を変える
これらの言葉を使ってはいけない、ということではありません。
ただし、そのまま言葉を投げかけると、想定以上のインパクトを与えてしまう可能性があるのです。
逆に相手の心を良い方向に揺さぶる言葉であれば、モヤモヤしている状況は打破できます。
たとえば——



相手の立場になって言葉を発してみる。
すなわち自分の気持ちがちゃんと相手に届くとき、その言葉は圧(プレッシャー)ではなく応援や支援(エール)として変わるのです。
言葉の設計は、信頼の設計そのもの
言葉は、人間関係をつなげるインターフェース(接点・接続点)です。
そしてどんなに良い意図があっても、相手への伝わり方(届け方)一つで、こちらの想定とは異なる印象を相手に与えてしまいます。
だからこそ、マネジメントや教育、チームづくりの現場では、「どんな言葉を使うか」以上に、「何を届けるか」を意識していくことが必要不可欠なのです。
言葉の設計は、信頼の設計そのもの。
これからの対話は、「くみ取ってもらうこと」ではなく、「意図を構造的に伝えること」でつながっていく時代なのでしょう。
次回の予告
今回「何げないひと言が相手に刺さらないようにするためには!?」にフォーカスして考えてきました。
実は当社では、この原因の一つとして、”信頼”と”期待”が混線しているのでは?と考えています。
そこで次回は、「信頼と期待はどう違うのか?」というテーマに踏み入れようと思います。
最後に、ここで一つ、心に問いかけていただきたいことがあります。
あなたが最近、誰かに言ったあの一言は、“信頼”でしたか? それとも“期待”でしたか?
どうぞ次回も、お楽しみに!