Topics | 2026年11月第1週の注目テーマ
① 統合=全部一つにすること?
ANAホールディングスは10月29日、AIRDOとソラシドエアの共同持株会社(リージョナルプラスウイングス)を、完全子会社化するための具体的な協議及び検討を進める旨の基本合意書を締結した旨を発表しました。当面は両社のブランドを維持しながら、まずは事業計画、収入管理、調達、施設関連の連携・機能統合を進める方針で、ANAブランドへの統合は中期的な検討テーマになりそうです。
参考:株式会社リージョナルプラスウイングスの完全子会社化に向けた基本合意書締結のお知らせ|プレスリリース|ANAグループ企業情報
統合と聞くと、別々だったものを一つにする姿が浮かびます。同じ名前にする。同じ組織にする。同じやり方にする。違いがなくなるほど、統合が進んだようにも感じることでしょう。
例えば、仕入れをまとめることで、安く買えるようになる場合があります。でも店の名前まで同じにする必要性は感じません。顧客がその店を選ぶ理由が、名前や品ぞろえ、接客にあるなら、その違いを残すメリットの方が大きいかもしれません。
会社を同じグループにすること、仕事を一緒に行うこと、顧客に同じブランドで見せること。それぞれ一緒にすることですが、目的も効果も違います。
ところが「統合する」と決めた途端、それぞれの違いをなくすべきものとして捉えがちです。そろえること自体が、前進のように感じられるのかもしれません。
今回のANAの方針は各社のブランドを残しながら、まずは機能をまとめるという順序になっており、そこから統合の意味を考えることができると思います。
別々ではできなかったことが、一緒になることでできるようになる。そのために何を一つにして何を残すか。
統合の意味は、そのような視点からもとらえることができるはずです。
② 採用の早期化は、何を早くすることか
キャリタスが企業1,116社に行った調査によると、2027年卒採用の選考を終了した企業は42.5%。内定者充足率の平均は66.1%でした。一方、2028年卒採用を見据えて、年内に面接を始める企業が半数強となっています。
参考:2027年卒採用 内定動向調査 / 2028年卒採用計画 ~新卒採用に関する企業調査(2026年10月調査)
今年の採用が終わらないうちに、来年の採用が始まる。早期化は、どうやら採用活動(就職活動)が早く終わることを意味していないようです。
同じ「早期化」でも、決算では、数字を早く確定させ、経営判断などに使えるようにすることを目指します。作業を早く始めるだけでは、その効果は得られません。
では、採用では何を早くするのでしょうか。
学生と会うこと。面接を始めること。内定を出すこと。それとも、他社より早く返事をもらうことでしょうか。
他社に先を越されたくないという思惑もあるでしょう。ただ、各社も活動を前倒しすれば、採用活動を早くすることは採用上の差別化にはつながりにくくなります。
企業と学生の関係をつくる採用が、いつの間にか、他社の動きに合わせる競争になっているのかもしれません。
ここで一つの示唆を示します。
「競争上は合理的な前倒しが、採用の確かさを高めているとは限らない。」
マイナビの2025年卒入社半年後調査では、勤務先のインターンシップ・仕事体験への参加者と不参加者で、転職意向にほとんど差はありませんでした。
一方、参加日数で見ると、1日参加では63.8%、5日間以上では46.3%でした。
実際の離職率ではなく、日数だけの効果とも言えませんが、接点(タッチポイント)の持ち方によって違いが見られます。
給与や内定の早さは比較しやすいものです。しかし、どんな人と、どんなやり方で働きたいかは、人によって違います。他社より条件がよいと感じても、本人に合う会社とは限りません。
早く会うことで、仕事や職場を知る時間を増やせるなら意味があります。互いを知らないまま返事だけを早めれば、辞退を心配する企業と、会社を探し続ける学生の活動が長引くこともあるでしょう。
他社より早く返事をもらう。その競争に目を向けるほど、「この人と、この会社で一緒に働けるか」を確かめる時間が薄くなっていないか。
早期化で得た時間を何に使うかが、問われているように思います。
③ 技術があれば、事業になる?
ファーメランタ株式会社は、植物などに含まれる天然由来の希少有用成分を微生物発酵により低コストかつ安定的に大量生産する技術の社会実装に取り組む石川県立大学発のスタートアップ企業です。2026年6月には、3,000リットル規模の培養装置を備えた実証プラントが完成しました。
参考①:微生物発酵で植物由来成分を代替生産するファーメランタに新規出資 | NEWS|Beyond Next Ventures株式会社
参考②:石川県立大学発ベンチャー ファーメランタ(株)のパイロットプラントが竣工しました – 研究トピックス|教員情報
創業を支援したBeyond Next Venturesによると、技術を持つ研究者と経営者候補を引き合わせ、共同創業につなげたといいます。
会社ができる前から、人や資金を組み合わせる。こうした支援の形は「カンパニークリエーション」と呼ばれているものです。
優れた技術があれば、事業になる。そう期待したくなりますが、実際には顧客を探し、資金を集め、生産や販売の体制をつくる。こういった工程がそろわないと事業にはなりません。
そして技術を生み出した人が、これらをすべて担う必要はありません。研究を深めることにも、顧客を見つけて事業を動かすことにも、それぞれ専門性があります。
当該事例では、会社ができてから経営を補うのではなく、創業の段階で研究と経営を担う人を組み合わせるという点が特徴の一つです。
社内の新規事業でも、似たような状況がないでしょうか。
「技術は面白い」「可能性はある」と言われながら、事業化への動きが十分に進まない。
そんなとき、技術の完成度だけを見るのではなく、誰が顧客を探し、誰が投資を判断し、誰が事業として引き受けるのか、といったことにも目を向けるためのリソースを調達していく。
その組み合わせやコンビネーションがあることで、技術が陽の目を見る/社会の役に立っていく可能性が高まるといえます。
技術の可能性を見極めることと、それを事業にする人を組み合わせること。
両方を一緒に考えるところに、この事例から学べることがありそうです。
④ 安定志向=変化が嫌い?
dodaが正社員1,500人に理想の社風を尋ねたところ、すべての年代で「安定重視」が「挑戦重視」を上回りました。
参考:社風とは?1,500人に聞いた理想の社風とミスマッチの実態 |転職ならdoda(デューダ)
他に「まずは試してみる」仕事の進め方についてはどうか、という問いに対して、それを支持する割合は、20代の25.0%に対し、50代は31.2%。フラットな組織文化への支持も、50代が最も高い結果を示していました。
一般的に、人間は「安定を志向しており、今を変えること望まない」という生き物であることは理解するものの、
この結果を見ていると、「安定を望むこと」と「挑戦すること」、これらは本当に両立できないのだろうか、とふと感じました。
例えば、顧客に約束した品質は守りたい。そのために、仕事の進め方は変えてみたい。会社の進む方向は定まっていてほしいけれど、そこへ向かう方法は工夫したい。
こう考える人にとっては、安定と挑戦は矛盾しないといえます。
そう考えると、「安定志向か、挑戦志向か」と分ける前に、本人が何を守り、何を変えたいのかを聞いてみる意味があります。
変化への抵抗に見えていたものも、会社の方針が定まらないことへの不安かもしれない。
反対に、会社が守るべきものを示せば、仕事のやり方はもっと変えたいという人もいるでしょう。
「安定を望む人」とひとくくりにせず、何を安定させたいのかを聞いてみる。
そこが確保されているのであれば、変化への挑戦の話もやりやすくなりそうです。

