Topics | 2026年9月第1週の注目テーマ

①完全失業率低下 ②時間外労働の助言規制 ③年収の壁の功罪④採用内定取り消し

① 失業率が下がっているのに、求人は増えていない?

2026年7月の完全失業率は2.4%となり、前月から0.1ポイント低下しました。完全失業者数は169万人で、前年同月と同じ水準です。
一方、有効求人倍率は1.18倍で前月と同水準、新規求人倍率は2.10倍で前月から0.06ポイント低下しました。新規求人数も前年同月比0.8%減となっています。

失業率だけを見れば、雇用環境は堅調に見えます。
しかし、企業の求人意欲がさらに強まっているわけではありません。

ここで注意したいのは、「人が採れない」と「求人が増えている」は同じではないということです。
求人が増えなくても、企業が求める職種・経験・勤務条件と、働き手側の希望が合わなければ、人手不足は続きます。
例えば、「経験者が欲しい」「フルタイムで働いてほしい」「この仕事を一人で担当してほしい」といった条件を変えなければ、採用市場全体が落ち着いても、自社の採用難は解消しないかもしれません。

人手不足というと、どうしても「働く人が足りない」という話になりがちです。

しかし、本当に足りないのでしょうか。

今の仕事・採用条件・育成方法の組合せでは、採れる人が限られているとも考えられます。
「どこで人を探すか」だけでなく、今の仕事を、今の要件の人に任せ続ける必要があるのか

採用難が続く会社ほど、一度確認してみる必要がありそうです。

② 残業を減らせば、社員は健康になるのか?

2024年4月から、建設業や自動車運転業務にも時間外労働の上限規制が適用されました。

JILPT(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)がその影響を分析したところ、規制の導入によって、平均労働時間や週60時間以上働く人の割合が減少し、希望する労働時間と実際の労働時間との乖離も縮小した可能性が示されました。
仕事の満足度についても、改善した可能性があります。

一方、健康やウェルビーイング、夜勤・不規則勤務などについては、明確な改善効果は確認されませんでした。
もちろん、この研究だけで「残業を減らしても健康にならない」と結論づけることはできません。

ただ、一つ興味深いことがあります。
労働時間が減ることと、働く人の状態が良くなることは、必ずしも同じではないということです。

残業削減というと、「月平均○時間削減」「長時間労働者○%減」といった数字が成果として示されます。
しかし、それだけで十分でしょうか。

仕事の量や優先順位、仕事の進め方、夜勤や不規則勤務、職場での負担そのものが変わらなければ、労働時間という一つの数字だけが改善している可能性もあります。
残業を減らすことは重要です。

ただし、それはゴールというより、働き方を見直すための一つの条件にすぎないのです。

「残業はどれだけ減ったか」だけでなく、残業が減ったことで、仕事そのものは何が変わったのか
そこまで確認して初めて、働き方改革の成果が見えてくるのではないでしょうか。

③ 「年収の壁」をなくせば、人手不足は解消する?

短時間労働者が「年収の壁」を意識して勤務時間を抑える、いわゆる就業調整が人手不足の一因として指摘されています。

では、壁がなくなれば、その人たちはもっと働くのでしょうか。

JILPTが公表した調査では、2024年10月の社会保険適用拡大の対象となった51~100人規模の企業で働く短時間労働者のうち、社会保険が適用された、または適用されるよう勤務時間を延ばした人は合わせて16.8%でした。

一方、社会保険への加入を避けるために勤務時間を短縮した人も10.9%いました。

さらに興味深いのが、現在、就業調整をしている人への質問です。
年収や労働時間による調整が必要なくなれば、今より働きたいと答えた人は64.7%に上りました。

ところが、
「働きたいし、実際にもっと働ける」人は28.3%。
働きたい気持ちはあっても、育児、介護、家事、健康などの事情から、本当に勤務時間を増やせるとは限りません。

ここには、制度だけを見ていると見落としやすい違いがあります。

「働きたい人」と「実際に働く時間を増やせる人」は同じではありません。

企業が「年収の壁がなくなれば、パート社員がもっと働いてくれる」と考えても、シフトの時間帯や仕事内容、家庭との両立条件が変わらなければ、期待したほど勤務時間は増えない可能性があります。
必要なのは、「壁を越えて働いてください」とお願いすることだけではありません。

壁を越えても働ける仕事と勤務条件になっているか。
制度変更と同時に、企業側の働かせ方も問われているといえそうです。

④ 内定取消しは、採用時点の問題なのか?

厚生労働省が、2026年3月卒業者の採用内定取消し状況を公表しました。

内定取消しは29事業所・80人

前年は21事業所・34人だったため、事業所数、人数ともに増加しています。一方、入社時期の繰下げは2事業所・2人で、前年の2事業所・93人から大きく減少しました。
もちろん、80人という数字だけを見て、「企業の採用計画がおかしくなっている」と判断することはできません。
内定取消しには、企業ごとにさまざまな事情があります。

ただ、企業側から考えると、もう一つ別の問いも浮かびます。

採用すると決めた時点では必要だった人が、入社するときには不要になる。なぜでしょうか。

将来の業績を完全に予測することはできません。
だからといって、「将来が分からないから採用できない」では、人材を確保することも難しくなります。

そこで重要になるのが、採用人数そのものだけではなく、採用した人をどのような仕事で活かすのかという考え方です。
当初予定していた仕事や配属先がなくなったとしても、別の仕事や配置で活かせる可能性はないか。
そもそも採用人数は、前年実績や各部門から出された「欲しい人数」を足し上げただけになっていないか。

採用計画というと、人事部の仕事に見えます。
しかし本来は、会社が将来、どの仕事に、どんな人を配置するのかという経営上の意思決定でもあります。

「今年は何人採るか」を決める前に、その人たちをどこで活かすのか。
採用環境が変化する今だからこそ、改めて考えておきたいテーマです。