Topics | 2026年10月第5週の注目テーマ

①物価2%でも、「落ち着いた」とは言えない

総務省が9月の消費者物価指数(CPI:Consumer Price Index)を公表しました。それによると25年9月に比べて2.1%の上昇です。生鮮食品とエネルギーを除くと、2.4%(前年同月比)です。

CPIは、家計が買う商品やサービスの価格が、以前と比べてどう変わったかを示す指標です。食品、家賃、電気代などの価格を調べ、家計の支出に占める割合を反映して計算します。今回の「2.1%上昇」は、この指数を1年前の同じ月と比べたものです。

ポイントは、買うものや量を一定にして比較することです。例えば、1個100円のリンゴが105円になれば、同じ100個を買う費用は1万円から1万500円になります。予算を1万円に据え置き、買う量を約95個に減らしたとしても、価格が5%上がったことは変わりません。
CPIは、こうした購入量の変化と切り離して、価格の変化を捉えてそれを指数化したものです。
ただしCPIだけで値上がりの理由まで分かるわけではありません。原材料高なのか、人件費の増加なのか、需要の拡大なのか。その判断には、別の情報を合わせて見る必要があります。

CPIの指数変化を商材別に細かく見ていくと、生鮮食品を除く食料は2.9%、家庭用耐久財は6.2%上昇しています。
一方、ガソリンの暫定税率廃止やエネルギー関連の政策には、総合指数の上昇率を0.82ポイント押し下げる効果があったと試算されています。
つまり、「物価2%」とは、どの会社の仕入れも、どの家庭の負担も2%増えた、という意味ではなく、また、物価の上昇率が小さくなったからといって、値段が下がるわけでもありません。

値上がりのペースが緩やかになっても、同じものを買うために必要なお金は増えています。
例えば、100円の商品が昨年5%上がれば105円。今年の値上がりが2%に収まっても、約107円になります。
値上がりのペースは緩やかになっても、家計や企業の負担(価格水準そのもの)は増え続けているということを示しています。

さて企業側はCPIをどういう視点で見るべきか。まず確認すべきことは、自社の主要な原材料、電力、物流費などが、それぞれどれだけ変わったか。その変化が利益にどう影響するかです。
CPIに合わせて一律2%分価格を引き上げるという発想ではなく、商品別の採算を踏まえて考える必要があります。

同時に、顧客の財布、つまり顧客がいくら出せそうなのか、ということも見たいところです。生活必需品への支出が増えれば、自社の商品に回せるお金は減ってしまうかもしれません。

その状況を踏まえてどう対応するか。ここに企業理念・行動指針の違いが表れるのだろうと思います。
・値下げして販売量を増やすことを狙う
・価格は維持し、その商品を本当に好きな顧客が「ここにはお金を使いたい」と強く魅力を感じる価値を磨く
・小容量の商品を用意し、1回の支払額を抑えて買い続けてもらう   など

「物価が何%上がったか」は入口です。
価格をいくらにするか。その前に、誰に、何を理由に買い続けてもらうのかを常に考え続けることが重要であることがわかります。

②日本人が85万人減り、外国人が32万人増える

総務省の人口推計によると、2026年5月1日時点の日本人人口は、前年2025年5月に比べて、1年間で85万5千人減少しました。一方、外国人人口は32万5千人増え、397万4千人となりました。

ここでいう外国人とは、日本で暮らす外国籍の人です。国内滞在期間が3か月以内の人は含まれないので、短期滞在の観光客が増えたという話ではありません。帰化して日本国籍を取得した人は日本人側に数えられるため、外国人人口の増加は、帰化によるものでもありません。

では、どんな外国人が増えているのでしょうか。

別の統計である出入国在留管理庁の6月末の集計では、前年末から「特定技能」が約5万4千人、「技術・人文知識・国際業務」が約4万人、「留学」が約1万5千人増えています。対象や時点が異なるため、先ほどの32万5千人の内訳ではありませんが、就労や学びを目的とした在留の拡大が確認できます。

働く人や学ぶ人が増えるということは、その人たちが日々の買い物をし、住まいを探し、地域のサービスを利用することでもあります。

その外国人が日本で仕事をするということに目を向けてみます。企業が採用時に外国人向けの説明を用意していても、実際の業務では、日本語の細かなニュアンスや、日本の商習慣を理解していることが前提のままかもしれません。職場でも、実際の仕事ぶりよりも、自分の成果や貢献を日本語でうまく説明できるかどうかで、評価が左右されている可能性があります。

もちろん、外国籍であることと、日本語や日本の商習慣への理解は別の話です。人数の増加だけでは、どんな対応が必要かまでは分かりません。だからこそ、自社の顧客や社員がどのような人たちなのかを見て、これまでの「普通のお客様」「普通の社員」という想定を確かめる必要があります。

様々な説明や手続きは、いま目の前にいる人が理解し、適切に利用できるものにチューニングできているでしょうか。

③組合ありでは鈍化、組合なしでは上昇。賃上げを動かすものはなにか?

厚生労働省の2026年調査によると、1人あたり平均賃金の改定率は前年と同じ4.4%でした。労働組合の有無で整理してみると、労働組合のある企業では4.8%から4.5%へ賃金改定率が低下し、逆に組合のない企業では4.0%から4.2%へ上昇しています。率そのものは組合あり企業が高いものの、前年からの変化の動きは異なるものになっています。

賃上げを促す要因は何か。組合との交渉が代表的なものですが、物価上昇から社員の生活を守る経営判断もあれば、採用や離職防止、最低賃金への対応など、さまざまです。
もちろん、今回の結果だけで「組合の影響が弱まり、人材獲得競争が強まった」とは言いきれません。同じ調査では、賃金改定で最も重視した要素は「企業の業績」が46.0%。「労働力の確保・定着」は前年の17.0%から12.1%に下がっています。ただし、これだけで採用や定着を考慮していないとは言えませんし、組合のない企業で賃金改定率が上昇した理由までは分かりません

日本労働組合総連合会(通称:連合)も、2026年春闘の総括では、中小企業や組合のない企業への賃上げの波及を課題に挙げています。10月22日に示した翌年の基本構想でも、最低賃金の引上げや、地域・産業の賃金相場づくりを重視しています。

組合との交渉は、その会社の中だけで完結するとは限りません。他社の交渉結果が地域や業界の相場として意識されれば、組合のない会社でも、採用や定着を考える際の判断材料になります。組合交渉と採用競争は、つながって賃上げを促すことも考えられるのです。

だからこそ、自社では何のために賃上げするのかを分けて考えたいところです。社員の生活を支えるためか、採用競争力を保つためか、仕事や貢献に応じた処遇にするためか。同じ賃上げ原資でも、目的によって誰にどう配るかは変わります。

自社の賃上げは、何を実現するためのものか。その目的に合った配分になっているでしょうか。

④制度がある会社は、本当に安全なのか

消費者庁は、楽天市場、Amazon.co.jp、メルカリ、ホットペッパーグルメなど、インターネット上で売り手と買い手をつなぐサービスの運営事業者を対象に、消費者保護の取組状況を調査しました。

2025年9~11月に実施され、10月23日の会議で示された調査結果では、回答した28社すべてが、消費者からの苦情を受け付ける窓口を設置していました。一方、そこに出店する販売業者などの連絡先が実際につながるのか、定期的に確認していたのは28社中4社にとどまりました。また21社は、定期的な確認ではなく、消費者から要請があった際に個別確認する対応でした。

この情報からいえることは、プラットフォーム側に窓口があることと、その先の販売業者に連絡がつくことは、安心・安全の視点でいえば別モノということです。

この違いは、企業内の制度にも当てはまります。
内部通報窓口を設けた。防災マニュアルを作った。データのバックアップを始めた。それぞれ必要な対策です。

しかし、通報が担当者に届き、必要な調査や対応につながるか。災害時に手順どおり動けるか。保存したデータを復元できるか。それは、設置や作成の報告だけでは分かりません。制度を使い始めてから、必要な対応が行われ、目的を果たすところまで確かめられているか。そこまで見て初めて、対策が機能しているといえるでしょう。

もし経営会議で確認するのが「導入済みか」「規程があるか」だけでとどまるのであれば、担当者の仕事も、そこを満たせばよい。
制度の形骸化を担当者の意識が低いというだけで結論づける前に、経営が何を成果として求めていたか、その視点で制度を統合的に見ていたか。

「制度がある」に加えて、必要な人が使えること、使った結果が目的につながることまで確かめる。その確認を、誰が、いつ行うかまで決めておくことが重要であることを示唆しています。

制度の見直しを議論する際には、まず、この問いから始めてみてもよいかもしれません。
“今のこの制度が実際に機能するか、最後に確かめたのはいつですか”